2023.9.29
|
電子ビーム溶接の解説 ②電子ビーム溶接の利点と欠点
弊社は摩擦圧接と電子ビームの受託加工を営んでおります。
恐らくどちらの加工もあまり聞きなじみがないかと思いますが、是非知っていただいて、色々な製品に採用していただけるよう、分かりやすく解説します。
電子ビーム加工は、電子の束を熱源として真空状態にて加工します。それが電子ビーム溶接の利点にも欠点にも繋がります。
電子ビームは空気に当たると分散されてしまう為、電子銃室や加工室は真空状態にする必要があります。収束レンズにて目標にしっかり収束させますと、高密度のエネルギーになります。このエネルギーを利用して溶接を行います。
電子ビーム溶接の利点
①高密度のエネルギーを使用する事により少ない熱量での溶接になる為、実際に溶接する時間がかなり少なくて済み、歪の少ない溶接や製品に熱影響が少ない溶接が可能となります。
②電子はコイル等で制御するのが容易であり、速い速度で自由に移動させたり、集束や拡散も自在に出来る為、振動させながら溶接する事によってブローホール等の不具合を軽減させたり、溶接割れ防止の為に余熱処理や後熱処理が狭い範囲で行う事も可能です。
③真空状態での溶接である為、溶接の仕上がりが非常に綺麗になります。又、溶接時にはどうしてもガスが発生してブローホールの要因になりがちですが、真空状態でガスが外に排出される為、不具合軽減も可能です。
電子ビーム溶接の欠点
加工室を真空状態にする必要がある為、真空引き時間がどうしてもかかってしまう点(弊社設備で30秒~2分程度)と、加工室内ので溶接である為、手で操りながらの溶接と比べて入り組んだ溶接が不得手です。
真空引きの時間は、1回の真空引きで多くの製品を溶接したりして工夫する事もありますし、量産の設備では加工室を極力小さくして軽減しております。入り組んだ溶接についてはしっかりした治具を作れは、溶接自体は自由に動かす事が出来る為、対応可能な事もあります。
どのような溶接でも得意不得意がありますので、製品によって適切な金属接合を選んでいただいて、より良い製品作りに繋げていただければと思います。